2021年償却終了で節税目的だったハワイ不動産は値下がるのか?

ハワイ不動産で節税 アイキャッチ

2019年11月26日の日経新聞電子版に「海外投資の節税認めず」という記事が掲載されました。内容には2020年度の税制改正大網の発表前に富裕層課税強化とありました。これまで税務関係者の間では「数年後には新規購入の海外不動産に対して減価償却の簡便方が適用外となる」という話で、取得済の海外不動産に関しては取得年の計算方法が既得権として継続して適用される理解でした。しかし改正の内容はすでに取得済みの海外不動産でも国内所得との損益通算を認めないという厳しい内容でした。

この記事の目的
令和2年の税制改正により潮目が変わったハワイ不動産。
これからの流れを読み解いて値下がった人気物件に狙いを絞る。

本記事の内容はできる限り最新の情報に基づいてお届けしておりますが、税務アドバイスを提供するものではございません。お客様の税務に適用される際には個別にご相談ください。

目次

令和2年税制改正大網が発表。 その内容は?

追記=2019/12/15
自民党の税制調査会より改正案である「令和2年税制改正大網」にはやはり海外不動産節税に関する内容も含まれていておりました。日経新聞の報道通り、「海外中古不動産についての簡便法の適用ができなくなる」ではなく「減価償却費による不動産の貸付けによる損失と給与所得を相殺して所得を圧縮する損益通算」を認めなくするという改正内容であったため、改正日以降の購入が節税できなくなるではなく改正日以降の申告から適用となり、現在の所有者にも影響を受けることになります。

実は以前より議論されていた税制改正案

平成30年に港区・千代田区・世田谷区の税務署に届け出られた国外不動産取得申告では、そのほとんどが木造の築22年以上または鉄筋コンクリート造の築47年以上であり、購入者は節税目的でアメリカ不動産を購入していることは明らかと言える状況でした。更には平成30年6月に思考された民泊新法では日本国内にて自宅の一部屋を変動価格でレンタルした際の収益は雑所得扱いであり損益通算できないと定めたのに連動して、ハワイ不動産でも宿泊料金がシーズンにより変動するバケーションレンタル(バケレン)の収益は雑所得と勘定されるケースも出てきて節税スキームは少しずつ変化してきていました。 ちなみに固定の月極家賃は不動産による事業所得と勘定され、ホテルコンドミニアムはホテル事業所得とみるか雑所得と見るかは事業規模により意見が分かれます。

いつごろ、どのような影響があり、対応策が必要か?

追記=2019/12/15
税制改正大網どおり改正案が通ると2021年分(2022年の確定申告)の所得税から適用されるため2020年12月までは損益通算できるそうです。改正後も簡便法ではなく残存使用期間を合理的に見積もりハワイにおいて適切であると証明できれば耐用年数を短く見積もることも可能とあるが証明が難しいようです。いままでは簡便法を利用して申告ができましたが、これからは税理士が残存仕様期間をもとに耐用年数を決定することになります。

今回の税制改正大網は不動産所得に関してであるので、事業所得は今までどおり簡便法が適用できる事になるようであるが、バケーションレンタルによる所得は日本の民泊新法との絡みで事業所得ではなく雑所得に所得区分される場合があるので注意が必要である。
今回の改正は所得税の損益通算に焦点があたっており、会社保有の中古不動産には影響が無いため、今後は法人名義での中古物件のご購入が増えるとみられます。法人の事業所得との内部通算は引き続き可能ですので節税を継続できるほか、法人の場合は長期譲渡と短期譲渡の区別がないので、4年で売っても同じ税率です。さらには会社保有の場合、法人税の節税を受け、受け取る役員報酬を減額して所得税を抑えるなどフィルターを通すことでメリットが生じる場合があるそうです。
すでに所有されている不動産の法人への譲渡も含め顧問税理士さんへご相談ください。

これが2020年までの節税スキーム

給与所得が高い方は不動産事業での損失を損益通算して所得税率が高い部分を削ぎ落として節税します。不動産売却時には譲渡益・キャピタルゲインが発生しますが不動産取得から5年経過して長期保有に区分されるとキャピタルゲインへの税率は20%となり、納税が先送りできるメリットの他、減価償却分がキャピタルゲインに勘定されても所得税が50%から20%に節税される事になる。というスキームでした。
さらにハワイ不動産の場合には不動産評価額の8〜9割が減価償却の対象となる建物比率であり、ワイキキエリアでは築47年以上のホテルコンドミニアムでも毎月キャッシュフローが見込めて、なおかつ帳簿上では減価償却分が損失となるので効率よく節税ができると注目されておりました。

節税目的で値上がっていたイリカイはどうなる?

2012年の円高ごろから富裕層の方々の間でにわかに人気のなったハワイ不動産での節税スキームですが実際に宿泊されたいというニーズに対応していたのが「イリカイホテル&ラグジュアリースイーツ」でした。もともとアメリカ本土からの観光客に人気がオーシャンフロントのホテルが同じ頃に分譲されて「円高」「節税」をキャッチフレーズに取引価格も順調に上がっていきました。

節税メリットへの期待から過去数年の間に値上がりし続けたイリカイですが、ホテル収入が追いつかずに利回りは低下して、共益費や固定資産税を負担するとキャッシュフローは平均約$1,000/月となっていました。これからは収益還元法に基づいた売買価格にアジャストされていくと少し値下がりも期待できます。

もう一つの変化は2019年7月に施行されたビル89によりイリカイ周辺でも違法のバケーションレンタルが消滅して、観光客用の部屋不足が深刻化しています。既存のホテルやホテルコンドミニアムでは需要に合わせて価格調整を行いますので宿泊単価が上がって収益性が改善される可能性があります。

2020年の観光客ゼロに加えて減価償却終了により、売出しを検討される日本人オーナー様は増えることが考えられます。2021年には普段出ない掘り出し物件が売りに出されることに期待して売り物件に注目してます。さらに観光客が戻るとホテル収入は右肩上がりとなる可能性が高いですので価格が見合えば今は買いどき!と言えます。

 まとめ:ハワイ不動産全体の市況はどうなる?

全体の取引の中で節税目的でハワイ不動産を購入される方の割合は多くありません。ハワイ不動産全体の市況に及ぼす影響は小さいですが、過去数年の間に節税目的で郊外の木造住宅を購入された方はプラン変更が必要です。 収益性のあるワイキキ周辺の物件であれば今後もしばらく保有してから希望価格でご売却いただけるタイミングを待つのが良いと思います。不動産投資は出口戦略が重要であるため早めの状況判断のお手伝いをさせていただきます。

参照リンクはこちら
税理士法人アーク&パートナーズのページはこちらから。
楽待:「海外不動産で節税」はこうして封じられる

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