法人税をハワイ不動産の家賃収入で支払う5つのルール

Eye catch for corporate tax benefit

令和2年の税制改正により海外不動産を利用した損益通算を利用した個人の節税スキームが難しくなってしまったとされるアメリカ不動産。節税目的でアメリカ不動産を保有されていたオーナー様は法人名義に切り替えるか手放されるかの選択を迫られ、損益通算が利用できなくなる2021年には多くの対象物件が放出される見込みです。

この記事の目的

法人名義でハワイ不動産を購入された場合に法人税へ影響と法人名義で不動産を取得される場合の注意点をご確認いただけます。

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Beautiful Hawaii Sea Shore
目次

国内とアメリカの減価償却の違いを利用する。

不動産の減価償却は、土地と建物により構成されており、減価償却ができるのは建物部分のみです。国内不動産では土地の価値が高く、建物の価値は低い傾向にあり、建物比率も20%程度が一般的です。それに対してアメリカ不動産は国土が日本の25倍あるため、土地の価値が低く、建物の価値が高くなります。コンドミニアムにおいては建物比率が90%も珍しくなく効率よく減価償却の恩恵を受ける事が可能です。

国内不動産の減価償却のルールでは「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)」と「鉄筋コンクリート造(RC)」の建物構造では耐用年数は47年であり、47年以上の古建物には簡便法で一律9年償却とされております。 
例えば1億円の物件の場合、国内不動産で20%の建物比率では2,000万円を9年で償却するので、年間約222万円の減価償却を経費計上できますが、アメリカ不動産では80%の建物比率で8,000万円を9年で、年間約888万円の経費計上が見込めます。

ちなみにアメリカの耐用年数は使用目的によって定められていて、住居用の建物は25年の定額法での減価償却となります。

US Dollar bill Image

「年間650万円」減価償却が利益を圧縮

例えば年間5,000万円の経常利益が出ている会社様が$1,000,000のコンドミニアムを購入された場合、
想定家賃収入(3%) :$30,000
建物価格$800,000を9年に分けて、年間約$88,888ずつ減価償却すると
年間の収支は約$58,888の赤字にすることができます。 
$1.00=¥110換算では約645万円の利益を圧縮することができます。

不動産では融資を引いてレバレッジも可能です。物件価格の50%を手出し資金としてご用意いただいて残りは融資を利用することで、同じ資金で2倍のメリットを享受して、さらにはお支払いになられた金利も経費として認められます。

アメリカ不動産でもハワイ不動産が選ばれるワケ

災害リスクがありスクラップアンドビルドが一般的な国内不動産では築47年の物件の価値はほぼゼロとなります。さらには国内不動産の空室率は年々増加しており国内不動産の約20%は空き家となっています。それに対してアメリカは人口が毎年約1%(およそ300万人)ずつ増加していて、不動産価値や家賃は需給バランスによってコントロールされているので、人口が増えれば増えるほど不動産の需要も上がり価値が上がります。

アメリカ不動産の中でもハワイ不動産が選ばれるポイントとなるのはふたつあります。ひとつは「築47年以上の物件」ふたつめは「広い国土のアメリカは土地の価値が低い」です。ハワイは地震・台風・津波のリスクは過去の記録を見る限りとても小さいです。山からの風が強いので海の近くでも塩害によるダメージは酷くありせん。大規模な開発が行われたのも1970年代であり、ワイキキのホテルの多くも築47年以上です。つまりハワイ不動産では築47年以上であってもホテル需要も賃貸需要も高くて価値のある物件が沢山ございます。 ふたつめの「広い国土のアメリカ」というのは島国ハワイには当てはまらないですが、建物比率がアメリカ本土と同様に高いのは税制のねじれの一つです。これらがハワイ不動産で減価償却のメリットを最大化できる古物件でも実際の価値は高くなるからくりです。

戸建てはNG?コンドミニアムが人気のワケ

アメリカ本土の不動産投資では「木造戸建ての4年償却」というのを見かけますが個人的にはオススメしません。木造戸建ては維持に手間がかかるのが普通ですので遠く離れた場所となれば現地の管理会社に任せる必要があります。なにもない4年はあっという間ですが、修理やトラブルが発生すると管理会社のコミュニケーションだけでも一苦労ですし、修理が続くと心配が重なります。コンドミニアムなら共同の区分所有ですので管理組合が建物を管理してくれます。管理費や修繕費はかかりますが、内容や使途が明確であり、相互の監視の目も効きますので、ほったらかしでも大事にはなりません。管理会社には客付けとテナントの管理のみお願いできれば十分です。

アメリカ本土と違い、ハワイはコンドミニアムが充実しています。立地の良いコンドミニアムなら賃貸需要も高く空室リスクも低く抑えられます。ハワイでも戸建てはワイキキから離れた場所が多く、ミリタリーのご家族への賃貸される方が多いようです。売却時の手離れの良さも考えるとワイキキ周辺のコンドミニアムがオススメです。

出口は5年後 任意償却で税制の変更にも対応できる。

所有されたハワイ不動産をご売却されて投資が完結するのですが、日本の税制において不動産は5年以上の所有が長期所有、それ以下は短期所有となります。譲渡益に対する税率が長期所有では20%であるのに対して短期所有は39%と大きな差になります。せっかく先送りした税金も法人税よりはるかに高い39%が課税されては元も子もありませんのでハワイ不動産投資では5年〜9年の長期プランが必要です。
長期所有でも譲渡益には20%の所得税が発生します。この支払いにはハワイの銀行口座に溜まった家賃収入を充てることで投資プランが完成します。9年間の満額家賃収入は約$270,000。簿価ゼロの物件を購入時と同じく$1,000,000で売却された場合の20%は$200,000ですので税金は家賃収入で支払える計算になります。収益不動産であっても家賃収入は保証されておりません。空室率や家賃の値引きもプランに入れてゆとりを持って賃貸を行ってください。 5年経過時に譲渡益と家賃収入とのバランスをお確かめいただき残り数年の賃貸経営のプランを修正されるのがオススメです。長期になるほど家賃収入の安定性は増してい
くと言えます。

実際には米国連邦やハワイ州への確定申告と租税条約による二重課税の除去が必要であり税理士または公認会計士へご相談ください。
売却には約7~8%の売却経費が必要です。詳しくは「ご購入・ご売却の流れ」を御覧ください。

Tax Calucurator

令和2年の税制改正では指摘されなかった法人による、海外不動産所得の損益通算ですが、税制が変更された場合に備えて任意償却をプランに入れておく必要があります。
個人は強制償却であるのに対して、法人の減価償却は税法で定められた限度額の範囲内で損金処理した金額が計上されて、少ない償却でも認められます。償却せずに残った部分は、次年度以降に償却することが可能です。運悪くハワイ不動産を購入されて5年以内に税制が変更された場合には「任意償却」を利用して償却のペースをスローダウンさせます。目安は家賃収入の利益を相殺できる程度であれば毎年の所得税はゼロ申告で済みますし、ご売却の際にも無駄な利益を避ける事につながります。

法人名義でローンを利用することは可能か?

法人名義でハワイ不動産を購入する場合に購入資金の一部をハワイの銀行からのローンを利用したいとご相談をいただいた際に銀行のローンオフィサーに相談したところ

  • ハワイでビジネスの実績が無い外国法人が法人名義で借り入れを組むのはできない
  • 法人名義の不動産を担保に個人名義で住宅ローンを組むことはできない
  • 個人のホールディング会社で不動産賃貸業を専門としている場合には個人名義の住宅ローンで会社が不動産を購入することはできる

3番目の場合には節税対象の日本法人とは別法人として考えられると損益通算できませんので目的を見失ってしまう場合があります。 結論としては法人名義のローンをハワイの金融機関から借り入れるのは選択肢としては難しいです。

節税以外にもメリット沢山のハワイ不動産

アメリカに現物資産を持ちドル資産を築くことは個人でも法人においても注目を集める分散投資です。ハワイのワイキキを中心としたベイエリアは世界中の富裕層が別荘を持つ特別な場所であり、不動産を所有するオーナー同士の結びつきも新たなネットワークやビジネスのきっかけになることもあります。法人で所有される別荘は福利厚生としても利用され、社員様の家族旅行や研修旅行にも利用されております。海外企業とお取引のある会社様ではハワイ研修によりアメリカでの生活を実体験することができたり、クリエイティブな業種の会社様では開放的なハワイの環境で効率よく高い成果に結びつく時間を過ごすことができると評判をいただいております。 相続においても一般的に法人での購入が有利とされており、利用価値も高いハワイ不動産ならご家族やご友人と素敵な時間を過ごす場所にもなります。

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法人税を節税する5つのルールまとめ

ルール1:まずは税理士または公認会計士へご相談ください。
ルール2:築47年以上のコンドミニアム収益物件を狙ってください。
ルール3:5年〜9年の長期所有されてください。
ルール4:家賃収入は出口での所得税へ貯めてください。
ルール5:節税以外のメリットも考慮に入れて物件をお選びください。

法人名義でハワイ不動産を所有される場合の注意点

法人名義でハワイ不動産を所有される場合の必要事項や流れをご紹介します。

物件購入時に必要書類

ご契約が締結後すぐにご用意いただく書類です。法人設立時に作成された書類と法務局に登記されている書類で法人の存在と所有者を証明します。

  1. 会社定款
  2. 現在事項全部証明書
  3. 会社証明 Letter of Good Standing
  4. 会社決議書 Corporate Resolution

1.2の書類はPDFファイルをEメールに添付してハワイの翻訳士が英訳いたします。翻訳費用は約$400で物件のご購入費用に含めることができます。
3.4の書類は1.2の英訳をもとにハワイの弁護士が書類作成いたします。書類作成費用は各$200で物件のご購入費用に含めることができます。

直筆サインが必要な役員メンバー

登録役員様全員の直筆サインが必要です。現在事項全部証明書の英訳が確認された後、エスクローより会社決議書に直筆サインをしていただく役員様のリストが届きます。 役員様全員の直筆サインとパスポートのコピーが必要です。

法人名義での海外送金

国内の金融機関より海外のエスクローへ物件購入金を海外送金いただきます。金融機関によっては個人から法人名義の不動産購入への海外送金に対して細かい確認を必要とする場合があります。ご利用予定の金融機関には事前に余裕を持ってご確認いただくのがオススメです。

法人名義での銀行口座開設

日本法人をハワイの商業局DCCAにて法人登録して、同一名の法人がハワイに存在しないことを確認した後、在ハワイの銀行にて法人名義の銀行口座を開設できます。 必要書類は物件購入時と同様の4種類で 会社決議書 Corporate Resolution のみ、銀行口座開設用に作成し直します。 準備が整いましたら、会社の代表者が在ハワイ銀行の支店で申し込みをする必要があります。物件購入時と同時に口座開設が理想ですが、ご滞在予定が無い方は次回のハワイ滞在時でも大丈夫です。 法人名義の口座がないと、法人名義で振り出された小切手の換金ができません。

銀行口座に入金された家賃収入を次回の滞在中に使いたいです。

法人名義の物件から生まれた家賃収入は法人のお金ですので、マネジメント会社との打ち合わせや会食など賃貸経営に必要な経費としてのご利用が可能です。 詳しくはご利用の米国税理士へ直接ご相談ください。

年一回の確定申告

毎年の収支報告をもとにCPA公認会計士、EA米国税理士が確定申告を行います。確定申告は法人名義で申告します。会社のお金を個人へ支払いするなど個人において所得が発生する場合には法人と個人の両方において確定申告が必要です。

番外編:築浅物件の減価償却費はどうなる?

築浅物件でも減価償却費を取ることはできます。 住居用鉄筋鉄骨コンクリート造の築47年以上の物件が簡便法にて9年定額法で償却されるのに対して、47年以下の物件は以下の計算を利用します。

築10年の築浅物件
(1)法定年数から経過した年数を差し引いた年数
47 – 10 = 37年
(2)経過年数の20%に相当する年数
10 × 0.2 = 2年
(3)耐用年数は(1)と(2)の合計 端数は切り捨て
37 + 2 = 39年

耐用年数39年の物件の償却率は0.026であるので 建物価値 $800,000の物件なら
800,000 × 0.026 = $20,800/年 (約220万円)を39年間で費用計上することができます。

参考:
国税庁:「耐用年数表」はこちらをクリック
国税庁:「中古資産の耐用年数」はこちらをクリック
国税庁:「資料編、減価償却資産の償却率表」はこちらをクリック

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